ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」とは?

「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」。フェミニズムの歴史で最も有名な一文の一つです。1949年に出版された『第二の性』の中のこの言葉は、何を言おうとしていたのでしょうか。そして、なぜ今も繰り返し議論されているのでしょうか。
3行でわかる
- ボーヴォワールは『第二の性』(1949年)で、「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」と書いた。
- 男性が自らを「主体」「人間の標準」とし、女性は男性に対する「他者」として位置づけられてきた、と分析した。
- この一文が、生物学的な性と社会的につくられる性を区別する考え方の始まりなのかどうかは、今も議論が分かれている。
01これは何か(人物・概念の正体)
「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」とは、「女らしさ」や女性の位置づけは生まれつき決まっているのではなく、社会の中でつくられていく、という指摘です。
シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908〜1986年)は、フランスの哲学者・小説家です。代表作『第二の性』は1949年に出版されました[1]。
原文はフランス語で「On ne naît pas femme: on le devient」です[1]。
02どんな時代・文脈で生まれたのか
ボーヴォワールは、実存主義の哲学を土台に、女性が置かれてきた状況を哲学の問題として論じた。
ボーヴォワールは、1947年に『両義性の倫理学』を出版するなど、実存主義の哲学者としても仕事をしていました[1]。
また、哲学者サルトルとは生涯にわたって共に歩んだパートナーでした[1]。『第二の性』は、こうした哲学の文脈の中で、女性が置かれた状況を正面から分析した本です。
03中心の思想を、生活の言葉で
男性が自らを「主体」とし、女性を「他者」と位置づける。その構造の中で、人は「女になる」ことを求められてきた。
『第二の性』(1949年)[1]
ボーヴォワールは、男性が自分たちを主体、つまり人間の標準として位置づけ、女性を男性に対する「他者」としてきたと論じた。女性は、男性を基準にして、そこから外れた存在として定義されてきた。「女になる」とは、こうした社会の構造の中で、女性としてのあり方を身につけさせられていく過程を指している。
よくある誤解: この一文は、体の性差が存在しないと言っているわけではない。女性の社会的な位置づけが、生まれつきの宿命ではないことを指摘している。
のちのフェミニズムでは、生物学的な性と社会的につくられる性(ジェンダー)を区別する考え方が広まりました。ただし、ボーヴォワール自身がこの区別を始めたと理解していたかどうかは、研究者の間で議論が続いています[1]。
04今の生活・現代社会での意味
「男らしさ」「女らしさ」の期待が、生まれつきのものではなく社会の中でつくられていないかを考える出発点として、今も読まれている。
「らしさ」を問い直す
職場や家庭での役割分担が、本人の選択なのか、社会から期待されてきたものなのかを見直すきっかけになる。
「標準」は誰か
何かを「普通」「標準」とするとき、誰が基準になっているのかを問う視点は、性別に限らず広く応用できる。
05関連する哲学者・概念
ボーヴォワールと生涯のパートナーだったサルトルの実存主義をあわせて読むと、理解が深まる。
06よくある質問
「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」の意味は?
女性のあり方や社会的な位置づけは、生まれつき決まっているのではなく、社会の中でつくられていく、という意味です。
『第二の性』の「他者」とは?
男性が自らを人間の標準とし、女性をそこから外れた存在として位置づけてきた、という構造を表す言葉です。
ボーヴォワールはジェンダー概念の生みの親?
のちのジェンダー概念につながったと見る人は多いですが、彼女自身がその区別を始めたと考えていたかは議論が分かれています。
出典
- Bergoffen, D., & Burke, M. "Simone de Beauvoir." Stanford Encyclopedia of Philosophy. https://plato.stanford.edu/entries/beauvoir/
- "Beauvoir, Simone de." Internet Encyclopedia of Philosophy. https://iep.utm.edu/simone-de-beauvoir/
- Aho, K. "Existentialism." Stanford Encyclopedia of Philosophy. https://plato.stanford.edu/entries/existentialism/