ポパーの「反証可能性」とは? 科学と疑似科学を分けるもの

どんな出来事が起きても「ほら、やっぱりこの理論どおりだ」と説明できる理論。それは最強の理論のように思えます。ところが哲学者ポパーは、まさにそれこそが科学ではない証拠だと考えました。科学の条件は、正しいと証明できることではなく、間違いだと示されうることだというのです。
3行でわかる
- ポパーは、観察によって間違いだと示される可能性(反証可能性)を、科学と科学でないものを分ける基準とした。
- アインシュタインの理論は、外れれば理論が否定される予測を含んでいた。一方、精神分析などはどんな行動も説明できてしまい、検証できないとした。
- 理論は正しいと証明されることはなく、反証を生き延びて「確からしさ」を増していくだけだと考えた。
01これは何か(人物・概念の正体)
反証可能性とは、ある理論が、観察や実験によって「間違っている」と示される可能性を持っていることです。ポパーは、これを科学の条件としました。
カール・ポパー(1902〜1994年)は、ウィーン生まれの哲学者です。科学哲学の主著『探究の論理』は1935年に出版され、英語版『科学的発見の論理』は1959年に出ています[1]。
ポパーによれば、起こりうる観察と矛盾しうる理論は科学的であり、逆に、どんな観察とも両立してしまう理論は科学的ではありません[1]。
02どんな時代・文脈で生まれたのか
ポパーは、アインシュタインの理論と、精神分析などの理論とを比べる中で、科学を科学たらしめるものは何かを考えた。
アインシュタインの理論は、もし外れていれば理論そのものが否定されるような、検証可能な予測を含んでいました[1]。
一方、ポパーは精神分析などの理論を、検証も反証もできないものとみなしました。どんな人間の行動も説明できてしまうことは、一見強みに見えて、実は本当の意味で予測をしていないという弱点だと考えたのです[1]。
03中心の思想を、生活の言葉で
理論は「正しい」と証明されることはない。一つの本物の反例があれば否定されるが、どれだけ確かめられても証明にはならない。
『探究の論理』(1935年)[1]
ポパーは、ヒュームの帰納法批判を受け入れたうえで、科学は帰納によって進むのではないと主張した。普遍的な法則は、たった一つの本物の反例で否定される。一方、どれほど多くの事例で確かめられても、理論は「確証」されるだけで、正しいと証明されることはない。
よくある誤解: 反証可能性は「反証された理論はダメ、反証されていない理論は正しい」という意味ではない。反証される可能性を持つことが、科学の理論の条件だという意味である。
04今の生活・現代社会での意味
「その主張は、どんな結果が出たら間違いだと認めるのか」という問いは、健康情報やニュースの真偽を見分けるときにも役立つ。
怪しい主張を見分ける
どんな結果でも「効果があった」と言える健康法や占いは、反証可能性を欠いている。この問いは、疑似科学を見分ける手がかりになる。
自分の考えを検証する
自分の意見について「どんな証拠があれば考えを改めるか」を決めておくと、思い込みにとらわれにくくなる。
05関連する哲学者・概念
ポパーの出発点となったヒュームの帰納法の問題と、科学の歴史から反論したクーンをあわせて読むと理解が深まる。
06よくある質問
反証可能性とは簡単に言うと?
ある理論が、観察や実験によって「間違っている」と示される可能性を持っていることです。ポパーはこれを科学の条件としました。
何でも説明できる理論はなぜ科学ではない?
どんな結果とも両立するため、何も予測していないのと同じだからです。ポパーは、それを強みではなく弱点だと考えました。
科学の理論は正しいと証明できる?
ポパーによれば、できません。理論は反証を生き延びて確証されるだけで、正しいと証明されることはないとしました。
出典
- Thornton, S. "Karl Popper." Stanford Encyclopedia of Philosophy. https://plato.stanford.edu/entries/popper/
- "Science, Popper's Philosophy of." Internet Encyclopedia of Philosophy. https://iep.utm.edu/pop-sci/
- Henderson, L. "The Problem of Induction." Stanford Encyclopedia of Philosophy. https://plato.stanford.edu/entries/induction-problem/