ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」とは? 言葉の意味は使い方で決まる

「ゲーム」という言葉を、誰にでも当てはまるように定義してみてください。勝ち負けがある? 一人遊びのトランプには相手がいません。楽しいもの? 真剣勝負は楽しいとは限りません。この素朴な疑問から、20世紀の哲学者ウィトゲンシュタインは、言葉の意味についての考え方を大きく変えました。
3行でわかる
- 「言語ゲーム」とは、言葉を話すことが、生活の中のさまざまな活動の一部であることを強調するための言葉。
- ウィトゲンシュタインは、多くの場合「言葉の意味とは、言語の中でのその使い方である」と述べた。
- 「ゲーム」のような言葉には、すべてに共通する本質はなく、重なり合う似た点があるだけだとし、これを「家族的類似」と呼んだ。
01これは何か(人物・概念の正体)
「言語ゲーム」とは、言葉を話すことは、それだけで独立した行為ではなく、生活の中の活動や「生活形式」の一部である、ということを強調するための言葉です。
ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1889〜1951年)は、オーストリア出身の哲学者です。「言語ゲーム」は、死後の1953年に出版された後期の主著『哲学探究』で中心的に使われた考えです[1]。
『哲学探究』の冒頭近くには、建築現場の例が出てきます。親方が「石板」「台石」「柱」「梁」という四つの言葉だけを使い、助手が言われた石材を運ぶ、という単純な言語ゲームです[1]。
02どんな時代・文脈で生まれたのか
若い頃のウィトゲンシュタインは、言葉は世界の写し絵だと考えていた。後期の彼は、自分のその考えを批判し、言葉を使う場面に目を向けた。
前期の代表作『論理哲学論考』では、文は世界の事実を写し取る「絵(像)」のようなものだと考えられていました[1]。
しかし早くも1931年には、ウィトゲンシュタインは自分の前期の仕事を「独断的」と呼んでいます[1]。後期の彼は、言葉が実際にどう使われているかを見ることへと向かいました。
03中心の思想を、生活の言葉で
言葉の意味は、頭の中や辞書にあるのではなく、言語の中での使い方にある。共通の本質がなくても、言葉は使える。
『哲学探究』43節・65節以下(1953年)[1]
ウィトゲンシュタインは、「意味」という言葉が使われる多くの場合について、言葉の意味とはその言語の中での使い方だと述べた。また、ボードゲーム、カードゲーム、球技などを見比べると、すべてに共通する特徴は見つからず、網の目のように重なり合う類似があるだけだとした。これを、家族の顔立ちが少しずつ似ていることにたとえて「家族的類似」と呼んだ。
よくある誤解: 「言語ゲーム」は、言葉遊びや、言葉で相手を言い負かすゲームのことではない。言葉の使用が生活の活動に組み込まれていることを示すたとえである。
04今の生活・現代社会での意味
言葉の意味をめぐるすれ違いを、「その言葉はどんな場面で、どう使われているか」から捉え直す視点を与えている。
すれ違いの原因を見つける
同じ「普通」「ちゃんと」という言葉でも、家庭や職場ごとに使い方が違う。意味の違いを、使われる場面の違いとして捉え直せる。
定義にこだわりすぎない
厳密な定義ができない言葉でも、私たちは問題なく使えている。定義探しで議論が止まったとき、使い方を確かめる方向に切り替えられる。
05よくある質問
言語ゲームとは簡単に言うと?
言葉を話すことは、生活の中の活動の一部だということを強調するための言葉です。後期の主著『哲学探究』で中心的に使われました。
「意味は使用である」とはどういうこと?
多くの場合、言葉の意味とは、その言語の中での使い方だという考えです。『哲学探究』43節で述べられています。
前期と後期のウィトゲンシュタインは何が違う?
前期の『論理哲学論考』では文を世界の写し絵と考えましたが、後期の『哲学探究』では言葉の実際の使い方に注目しました。
出典
- Biletzki, A., & Matar, A. "Ludwig Wittgenstein." Stanford Encyclopedia of Philosophy. https://plato.stanford.edu/entries/wittgenstein/
- "Ludwig Wittgenstein." Internet Encyclopedia of Philosophy. https://iep.utm.edu/wittgens/
- Miller, A., & Sultanescu, O. "Rule-Following and Intentionality." Stanford Encyclopedia of Philosophy. https://plato.stanford.edu/entries/rule-following/